事業再生とオーナーの相続税対策
事業再生においては、再生対象企業の法人税や消費税のほか、オーナーの相続税への配慮が必要なケースがある。特に、平成26年(2014年)度税制改正により、平成27年1月1日以後、相続税の基礎控除額が従来の6割に引下げられたことで、相続税の納税が必要なケースが増加して、中小企業の事業再生の局面で、相続税対策が必要なケースは増加している。以下では、典型的なケースを3つ挙げ、それぞれ解説を行う。
1.オーナーが再生対象企業に対して、多額の貸付金を有しているケース
再生対象企業では、資金繰りが上手くいかず、オーナーから多額の借入を受けているケースがある。この場合、当該借入金は、オーナーにおいて再生対象企業に対する貸付金となって、私的整理のケースでは、原則的には、その額面が相続財産として課税対象となり得る。
但し、例外規定として、額面以下の金額で評価できるケースが財産評価基本通達205に示されており、私的整理の際にはオーナーの相続税対策を含めて、オーナーからの借入金への対応を再生計画に盛り込むことを検討すべきである。
2.再生対象会社が、実態ベースは債務超過であっても、相続税評価では株式に課税がされる場合
再生対象会社では、多額の不良資産を有している場合がある。例えば、売掛金や在庫、オーナーなどに対する貸付金である。実態BSなどを算定する際には、これらの不良資産は会計的に減額して評価されるが、相続税の評価では、原則的には、額面として評価される。
この場合、実態BSでは、債務超過であったとしても、相続税の評価では資産超過であるというケースが生じることとなり、オーナーの株式は相続税の課税対象となり得る。
3.オーナーが再生対象企業に対して、保証債務などを有する場合
オーナーが、再生対象企業に対して保証債務を負っている場合がある。特に、中小企業では殆どのケースで該当する。
この保証債務であるが、相続税の評価上は、原則として、債務とならず、相続財産から控除することができない。そのため、私的整理の局面では、今後保証債務の履行が十分に見込まれる場合には、予め事業再生計画に反映しておくことが必要と考える。
参考条文:財産評価基本通達204、財産評価基本通達205
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