Archive for the ‘節税’ Category
消費税の簡易課税による節税対策と過誤事例
Q:
当社(A社)は3月決算なのですが、平成25年3月にB社と合併し、合併直後の3月に多額の設備投資を実施する予定です。当社はここ数年売上高が低く、H25年3月期の基準期間における課税売上高は1,000万円以下です。また、過去に節税対策として簡易課税制度選択届出書を提出しておりました。
なお、被合併法人であるB社の当該基準期間における課税売上高は1,000万円超です。
このような場合、消費税の節税の観点からどのような対策が必要となりますでしょうか。
A:
合併事業年度で原則課税の適用による消費税の節税を検討すべきと考えます。平成25年3月に多額の設備投資を実施する予定とのことですが、当該設備投資により消費税が還付申告等になるようであれば、原則課税と簡易課税を継続する場合のそれぞれのケースの消費税額を試算の上、有利な課税方法を検討することとなります。
このケースの場合、過去に提出した簡易課税制度選択届出書に注意が必要です。合併法を行った日の属する課税期間の納税義務の有無は、合併法人の基準期間における課税売上高または被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高のうち、いずれかが1,000万円を超えているか否かにより判定します。しかし、簡易課税制度の定期用の有無は、合併法人の基準期間における課税売上高のみによって判定します。
そのため、特に不適用届出書等を提出しない場合には、合併事業年度は簡易課税が適用され、設備投資による還付申告等が難しくなります。
(参照 平成26年5月15日 税理士会 税理士職業賠償責任保険の事故例)
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平成26年度税制改正により、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例が縮減されております
Q:
先日相続が発生し、私は土地を相続しました。相続の際に相続税を支払ったのですが、その土地に係る相続税相当額を、土地の取得費として加算することができるのでしょうか
A:
現行の税制では、相続した土地に係る相続税相当額を取得費に加算することができる特例があるため、相続した土地等に対応する部分の相続税相当額も、土地の取得費に加算されます。
しかし、この点について、平成26年度税制改正があり、この特例の適用範囲が縮減されております。
現行の税制では、相続した全ての土地が対象となっておりましたが、平成27年1月1日以後に開始する相続では、相続した土地のうち、実際に譲渡した土地に係る相続税相当額のみが、特例の対象として取得費に加算することができ、譲渡していない土地は、その土地に係る相続税相当額は取得費に加算することが出来なくなっています。
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支払う給与等が増加した場合の税額控除制度(所得拡大促進税制) 平成26年度の税制改正により、適用を受けられなかった過去分も救済される場合があります。
Q:
アベノミクス効果もあり、昨今、従業員の雇用を増やしたり賃上げを行う企業をしばしば耳にしますが、当社でも昨年より雇用増と賃上げを実施しています。
支払う人件費が増えた場合に増加した給与等の10%相当額を税額控除できる制度(所得拡大促進税制)については、平成26年3月決算では残念ながら要件を満たせず、適用を受けられませんでしたが、平成26年度の税制改正により要件が緩和され、平成27年3月決算で平成26年3月決算分も税額控除を受けられる場合があると聞きました。
どのような場合に、平成27年3月決算で平成26年3月決算分も税額控除を受けられるのでしょうか?
A:
次の3つの要件を平成26年3月決算でも平成27年3月決算でも満たす場合に、平成27年3月決算において、平成26年3月分も加えて税額控除を受けることができます。
① 国内雇用者の給与等が、基準年度(25年3月期)の国内雇用者に対する給与等より「2%以上増加」すること。
② 国内雇用者の給与等が、前期の国内雇用者の給与等以上であること。
③ 継続雇用者の平均給与等が、前期の継続雇用者の平均給与等を超えること。
例えば、平成26年3月決算において①の増加割合が3%であった場合には、改正前の要件である増加割合5%以上を満たさないため、平成26年3月決算では税額控除を受けることはできません。しかし、増加割合2%以上という改正後の要件は満たしています。このような場合には、平成27年3月決算において改正後の要件を満たすことで、平成27年3月決算で、平成26年3月決算分を上乗せして税額控除することができます。
税額控除の上乗せは、あくまでも平成27年3月決算で所得拡大促進税制の適用を受けることが前提となるため、たとえ平成26年3月決算が改正後要件を満たしていたとしても、平成27年3月決算が要件を満たしていない場合は適用できませんので、注意が必要です。
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業績悪化などによる役員報酬の期中の変更と役員報酬の損金算入
法人税法では、役員報酬が損金算入できるケースを一定の類型に限定している。これは、役員報酬を恣意的に変更することによる租税回避を防止する趣旨である。
役員報酬を損金算入できるケースは、下記の3つの類型がある。
1 定期同額給与
2 事前確定届出給与
3 利益連動給与
このうち、もっとも一般的な類型と考えられるのが、1の定期同額給与である。定期同額給与とは、支給時期が1ヵ月以下の一定の期間ごとである給与であり、かつその事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの等をいう。
定期同額給与で問題になるのが、期中に変更を行うケースである。たとえば、事業再生計画などの作成を行う過程で、期中に役員報酬を変更するケースがある。
なお、昨今では中小企業再生支援協議会などの公的な機関の支援を受けて事業再生計画を策定するケースも増加しており、当該計画のなかで、期中に役員報酬を変更する施策を盛り込むケースもあるであろう。
定期同額給与は、本来はその事業年度の途中で支給額を変更することはできない。しかし、次のような場面では支給額を変更することを認めている。
ア 事業年度開始から3か月を経過する日までにされた定期給与の額の改定
イ 役員の職制上の地位・職務の内容の重要な変更
ウ 経営の状況が著しく悪化したこと等による変更
このうち、例えば事業再生計画などを外部の公的な機関と連携して作成するようなケースにおいて、その事業再生計画の中で役員報酬を変更する際には、上記ウの経営状況が著しく悪化したこと等による変更と認められ、役員報酬の変更を行ったとしても、役員報酬の損金算入が可能と思慮される。
なお、役員報酬の損金算入が否認される場合には、源泉税等も含めて納税額へ影響が大きくなる可能性があるため、具体的な適用に際しては、事前に専門家へ十分相談されることをお勧め致します。
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自宅に設置した太陽光発電設備による電力の売却収入の税務上の取扱い
再生可能エネルギーへの関心の高まりとともに、自宅に太陽光発電設備の設置をご検討されている方も増えていることでしょう。
本日は、太陽光発電設備の設置に関連する税務上の取扱いについてご説明いたします。
余剰電力の売却収入については、それを事業として行っている場合や、他に事業所得がありその付随業務として行っているような場合には事業所得に該当すると考えられますが、給与所得者が太陽光発電設備を家事用資産として使用し、その余剰電力を売却しているような場合には、雑所得に該当するとされております。
なお、平成24年7月以降、一定規模以上の太陽光発電設備により発電が行われる場合には、その送電された電気の全量について電力会社に売却すること(全量売電)が可能とされており、給与所得者がこの全量売電を行っている場合の売電収入も、上記と同様に、それが事業として行われている場合を除き、雑所得に該当するとされております。
また、消費税の取扱いですが、国税庁の質疑応答によれば、余剰電力の売却は、会社員が事業の用に供することなく、生活の用に供するために設置した太陽光発電設備から生じた電気のうち、使い切れずに余った場合に当該余剰電力を電力会社に売却しているものであって、これは消費者が生活用資産(非事業用資産)の譲渡を行っているものであることから、消費税法上の「事業として」の資産の譲渡には該当しないとされております。
但し、全量売電の場合には、会社員が電力会社との間で太陽光発電設備により発電した電気の全量を売却する旨の契約を締結し、その発電した電気を生活の用に供することなく数年間にわたって電力会社に売却するものであることから、会社員が反復、継続、独立して行う取引に該当し、消費税の課税対象に該当するものとされております。この場合、開業1年目、2年目は原則、免税事業者に該当すると想定されますが、3年目も売電収入が1,000万円を超えることが無ければ免税事業者に該当すると考えられます。また、初期投資として太陽光発電設備に数百万円かかるため、初年度に課税事業者を選択して還付申告をすることも検討に値しますが、予め詳細にシミュレーションを行うことが必要です。
太陽光発電設備の導入をご検討されている方は、弊社で詳細なシミュレーションを致しますので、お気軽にお問合せ下さい。
【参考】
国税庁 質疑応答「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」、「会社員が自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却」
税務通信 3291号 2013年12月16日
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親子会社間の取引と寄附金
親子会社間での取引については、取引価格の全部又は一部が税務上、寄附金に該当すると認定される場合があります。親子会社間では取引価格を恣意的に高くしたり低くしたりすることで、一方から他方へ利益を移転することができ、利益調整が可能となるためです。取引価格の全部又は一部が税務上の寄附金に該当すると認定された場合には、支払い側において寄附金と認定された金額の全部又は一部を損金算入できないことになります。
実務上、親子会社間の取引価格が寄附金と認定されるか否かを判断することは難しいですが、最近、参考になる判決がありました。
平成26年1月24日の東京地裁の判決ですが、納税者勝訴で控訴されずに確定しています。
納税者は住宅用外壁部材の製造会社ですが、親会社に住宅用外壁部材を販売する際に、期首において暫定価格を設定したうえで、合理的な原価計算による実際原価に基づいて期末において期末価格を決定して差額を精算していたところ、当該精算額が寄附金に該当するとして国税当局により更正されていました。
しかしながら、裁判所の判断では、契約関係や暫定価格の設定から期末価格の決定までの経緯を勘案すると、取引価格は期末価格であり、また、取引価格と市場価格とのかい離を認めるべき証拠はないため、寄附金には該当しないとされました。
この判決から、暫定価格を設定して後に精算する等の支払い方は寄附金認定の本質的な問題ではなく、取引価格と市場価格がかい離しているか否かが寄附金認定の根幹であると考えられます。
親子会社間で取引を行う場合には、取引価格と市場価格がかい離していることが明らかか否かに注意を払うことが、最も重要なポイントとなります。
繰越欠損金の引継ぎにおける特定役員引継要件
ヤフーが合併により被合併法人から引き継いだ繰越欠損金約540億円が否認された事案について、平成26年3月18日に東京地裁の判決がありました。
この事案では、ソフトバンクから買収した会社が被合併法人であり、ヤフーと被合併法人は特定資本関係が生じてから5年以内であったため、ヤフーが被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐためには、みなし共同事業要件を満たす必要がありました。
この点ヤフーは、買収前に被合併法人に役員を送り込み(ヤフーの代表取締役が被合併法人の副社長となりました)、当該役員が合併後もヤフーの役員となることで、特定役員引継要件を満たし、もってみなし共同事業要件を満たし、繰越欠損金を引き継ぎました。
争点の一つとなったのはこの特定役員引継要件で、ヤフーが被合併法人に役員を送り込んでからわずか2ヶ月で合併が行われたことや、当該役員以外の被合併法人の役員は合併により全員退任したことなどから、みなし共同事業要件を形式的に満たすための行為であったとして、組織再編税制における包括的否認規定(法人税法132条の2)により否認されています。
この判決文における東京地裁の判断の部分に、次のような記載があります。
「みなし共同事業要件に係る特定役員引継要件が、特定役員引継要件に形式的に該当する事実さえあれば、組織再編成に係る他の具体的な事情を一切問わずに(すなわち、例えば、①特定資本関係発生以前の時期における当該役員の任期、②当該役員の職務の内容、③合併後における当該役員以外の役員の去就、④合併後における事業の継続性や従業員の継続性の有無、⑤合併により引き継がれる事業自体の価値と未処理欠損金額との多寡、⑥被合併法人と合併法人の事業規模の違いなどの事情を一切問わずに)、未処理欠損金額の引継ぎを認めるべきものとして定められたとはいえず、特定役員引継要件に形式的に該当する事実があるとしても包括否認規定を適用することは排除されないと解することが相当である。」
特定役員引継要件は形式的に満たすだけでは認められないということは、実務上は従来より意識されていたと思われますが、上記によれば、控訴審でどのような見解が示されるかはともかく、現時点の東京地裁の見解として形式的な特定役員引継は否認事由になることが明らかにされ、また、考慮すべき事情の一例が示されています。
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